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4.それだけは勘弁してください

 勉強、運動、芸術。全てにおいて突出しすぎることもなく、しかし常に上位をキープ。喧嘩こそしないけれど、格闘技なんかかじっちゃってて、そこそこ強く、体格も十分。顔だって中の上ってとこなのに、女子には当たり障りのない態度。ちょっと天然ボケで、同性からも嫌われない。
 こうやって並べ立ててみると、意外や意外、彼は完璧超人なんじゃないか?

 いつものマックの窓辺の席で、小学部からの腐れ縁の男をそう評した目の前の男に、俺はいつものように突っ込んだ。

「……彼方が? どこが完璧超人? あの天然ボケボケの暖簾男が」
「詠次がそういうのは、自分も完璧超人に近い場所に居るからだろ?まだまだだけど」

だから、『暖簾』と彼を一蹴出来るんだと。励は少しだけ不愉快そうな顔を見せてから、俺のポテトを7、8本ちょろまかした。

「だって、さっき言ったこと、何一つ間違ってないし。しかも彼女もかわいい。ここで俺が詠次と、男二人でマック☆ なんて、もの悲しいことしてる間に、彼方は彼女とデートですよ。ああ、オレもかわいい彼女がほしい!  」
「完璧超人も、そんな幸せなわけじゃねえって」
「別に、完璧超人だから幸せだとは言ってないけど」

 彼の言うことは、時々本気でわからない。ついさっきそう言ったはずだけれど。

「俺には『彼方が出来すぎてるから、彼女が居てうらやましい』と言ったように聞こえたんだが」
「ノンノン。そこがつながる意味がわかんないし?」
「お前の意味がわからん」
「彼方は完璧超人なのに、しかも彼女も超かわいいのに、何で人生をつまらなさそうに生きてるんだろうねと、問いかけているわけなのだよ」

 そこは、彼の深い部分なわけだよと、彼に代わって言ってやりたかったけれど。俺がそんなに彼をフォローするのも変な話だし。

「お前は、人生楽しそうだな。完璧超人に程遠いのに」

 どうしてこうも、真逆の人間とつるんでるのか、自分でも不思議になる。彼方と励は、あまりにも違いすぎる。もっと似てる人間とつるみそうなもんだけど。類は友を呼ぶと、昔から言うではないか。

「程遠いはいらないってば! 人生は楽しいけどね。あと必要なのはかわいい彼女だけ」
「楽しいならいらないんじゃないか? 」
「いるよ! もっと楽しくなる! 詠次もそう思うだろ?」

 もしかしたら真逆と思ってるのは俺だけで、俺たち3人、実は似てるということか? (それはそれでショックが大きいが)

「そう考えたら、彼方はものすっごく幸せな状態なわけなんだから、楽しめばいいのに。なあ」
「それは確かに……そう思うよ」

 そうなんだ。確かに、彼方は励の言うとおり、「満遍なく出来がいい」と俺も思う。出来すぎて人間関係に亀裂が入るような真似もしないし。欲しいものは一通り持ってる感じがする。そんなやつがこれ以上何かを望むのは、持って無いものからしたら「ただの我侭」でしかない。
 だけど、彼方は見えない何かを求め続けているし、満足もしていないし楽しそうでもない。不幸そうにもしてないけれど、幸せそうでもない。

 この点で、彼方と励は真逆に見えるけれど、そうでなかったとしたら? 実はただの類友だとしたら。見かけはそうでなくても、一緒にいるなら、似てるところがあると仮定して。

「お前が完璧超人だったら、もっと楽しそうだな」
「どうだろね。俺は完璧超人でないから、よくわかんないし? 」

 それはまさに真理だけれども。彼のことは、彼しかわからない。
 でも、なんだか励自身も、彼の立場が幸せではないということを言ってるように聞こえた。

「でもまあ、状況とか関係ないし? 」

 俺の心を見透かしたように、彼はそう言った。

「俺は腹をくくってるからさ。もうこれ以上ないってくらい」

 彼らが似ていると仮定するなら、彼方が励のように「腹をくくる」ことが出来ないのは、やっぱり状況のせいのような気がしてきた。

「でも、お前も彼方の立場だったら、腹をくくることが出来なかったかもしれないし? だから彼に責任があるわけじゃない。環境のせいってことになるな」
「彼方も詠次も、自分と相手に甘いよな」
「お前もな」

 気を悪くするかと思ったが、励は「お互い様☆」なんて言って笑っていた。
 彼と彼方の決定的な違いを見せられたような気がした。

「それにしても、詠次は彼方のことになると、本気で深刻な顔するよな。なんか、自分のことみたいに」
「……そうでもない」

 余計なことを突っ込んできやがって。畜生! 畜生!
 必死で目をそらして、ポーカーフェースをするけれど、どこまでばれているのか。

「人の心配するより、自分の心配すればいいのに。あ、そうか」
「……そうか?! そうか、ってなに?! 」

 何だ、何言うんだこいつ? 俺のこと、なんて言うつもりで……。

「詠次と彼方って、似たもの同士だからな。自己弁護か。そうかそうか」

 ああ、もう。そういうことにしといてくれ。
 それもまた真理か。似ているからこそ惹かれるって。
 だけど、それ以上突っ込むのは……。

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